【インタビュー】駿府の工房 匠宿 館長 杉山浩太さんに聞く
駿府の工房 匠宿にて「静岡市のデザインプロジェクト展」が
2024年11月1日(金)~12月1日(日)まで開催されます。
静岡市では地場の産業振興を目的に、1988年から静岡市と静岡市のものづくり企業、そしてデザイナーとの取り組みがはじまりました。駿府の工房 匠宿においても2022年より「体験をデザインする」というプロジェクトをスタートさせ、ミナ ペルホネン デザイナーの皆川明氏や、建築家の隈研吾氏と体験のデザイン開発をいたしました。
今回は館長を務める杉山さんに、館長としての想いや駿府の工房 匠宿の今後の展望についてお話を伺って来ました。
職人との距離も近く静岡ならではの伝統工芸を体験できる場所
静岡県静岡市にある駿府の工房 匠宿は、日本の伝統工芸を体験できる特別な場所。ここでは静岡の職人たちが持つ技術や知恵を直接学びながら、自分自身の手で作品を作り上げることができる貴重な体験を提供しています。
匠宿では、静岡ならではの伝統工芸を体験できるワークショップが豊富に用意されており、駿河竹千筋細工、木工、漆器、染物、陶芸など、さまざまな技術を学びながら、地元の素材やデザインに触れることができます。初心者でも丁寧に指導してくれるので、安心して挑戦できるのも魅力。
また、ただの体験にとどまらず、職人とのふれあいを通じて、彼らの情熱や技術の裏にある物語を感じられることも魅力の一つ。自分の手で作った作品は、かけがえのない思い出として特別な価値を持つでしょう。
周囲には美しい自然や歴史ある景観も広がり、訪れるだけで心が癒される環境があります。工芸体験の他にも、静岡の名産を楽しむグルメも堪能でき、まさに五感で静岡を味わうことができる施設です。今では県内外から注目される施設となっています。
いろいろな顔を持つ施設に静岡から全国への楔となりたい
今回お話を聞いたのは館長を務める杉山さん。
前職はなんとプロサッカー選手という異色の経歴を持っています。サッカー選手としての華々しいキャリアを持ちながら、駿府の工房 匠宿の館長にご縁あって就任。
ものづくりとは全く違う世界にいたのにも関わらず、ここまで伝統工芸などのものづくりにのめり込めたのは駿府の工房 匠宿の職人たちの熱い想いに応えたい、館長としての役割を果たしたい想いからでした。
「僕は工芸体験だけではなく、いろんな顔を持つ施設でありたいっていう想いがあるんです。工芸体験がメインなんですけど、体験だけの施設だと、多分これだけお客さんが来てくれない。お客さんが少ない日には企画として静岡の魅力ある他社とコラボして呼び込んだり、ものづくりの製造場所になったりとか、そういういろんな顔を持つ施設でありたい。ただのクラフトパークでした。みたいのはあまり望んでなくて、ここがあるから、職人さんの価値も上がって、ちょっと育成の補助もできてって。そういう施設にしたいんです。」
様々な企画をやりながら駿府の工房 匠宿も盛り上げていくっていうのが狙い。
「近年ではそのモノが先行してしまう、それを作った人が取り残されてしまっている。それに違和感を感じる。
物と人。どちらも輝かせたい。
それができるのは匠宿。体験をできることで、記憶に残る、よりそれを深く知りたくなるのではないか。」
「入館数より体験者数に重きを置く流れにはなっていますが、それにとどまらず静岡の工芸や産業とかにも意識を持ち、そしてこの施設が人気になってものづくりの職人がかっこいいと憧れてもらえる施設になりたい。
匠宿では花澤さん(*花澤啓太=株式会社アンノット 代表 プロダクトデザイナー)っていうデザインディレクターもいる中で、体験と展示をブラッシュアップしてくれる。そういう方々がいる中で、さらに外部デザイナーと体験作っていくって、なんかすごい贅沢なことでもある。」
今では一人ひとりの職人さんや館で働くスタッフたちや
匠宿に関わる企業さんとの架け橋となっている杉山さん。
11月から開催されるデザインプロジェクト展についても「デザインプロジェクトって過去を知ることで僕たちも刺激になるというか、全国へのくさびとなるような施設になれば」と杉山さんは話します。
静岡の人に少しずつ、また改めて知ってもらえる機会を増やし、全国の人に向けた要素も入れながら益々発展していきたい。
その願いの一端が今回の展示にあらわれるような気がしています。