【インタビュー】めぐる沼津映画祭 実行委員長 大木真実さん
しずおか映画祭も開催され、映画で盛り上がりを見せる沼津市。連動するように開催されるショートフィルムフェスティバル「めぐる沼津映画祭」の実行委員長・大木さんにインタビューをしました。
めぐる沼津映画祭のはじまりについて教えてください。
「2016年からスキマcinemaという移動式のミニシアターをやっていました。まちの空きビルとか空き地とか、屋上とか。普段使われていないようなところにスクリーンを立てて、シネコンで見れないようなミニシアター系の映画とか、アートやアニメーションをセレクトして観るという自主上映会。月一回くらいのペースで。
去年、沼津で映画を作るワークショップをやっている映画監督とご縁があり、『映画祭やりませんか』という話を思いきってしてみました。
とにかく一度やってみよう、と『みちくさ映画祭』という映画祭を開催し反応もよかったので今年の映画祭へとつながりました。
スキマcinemaを始めたきっかけは、沼津市のリノベーションまちづくりで参加したまち歩きワークショップ。川沿いの空蔵があったんですけど、 本当に思いつきで、なんかここで映画見たら面白そうだなって思って。自主上映会という形ではじめてみました。
全然知識がなかったので、お手軽なホームシアターセットやスクリーンを買って。スタートは本当にそんな感じでした。
検索をして配給会社とかに問い合わせることができるんだって知りました。そこからいろんな配給会社とやり取りをしました。今では試写会にも呼んでもらえたりすることもある嬉しいご縁です。
全国で映画祭ってたくさん開催されていますが、上映作品でその映画祭の個性が決まってくるようなところがあります。プロアマ、ジャンル問わず、短編映画作品を制作しているさまざまなクリエイターの方が応募してくれています。
今、沼津ではパブリックマインドを持った『まちを楽しめる事業者』が本当に増えました。そういった人たちと私は繋がれています。」
沼津とのつながり
「私はタイミングよく沼津市でリノベーションまちづくりが始まる時にその冊子制作のお仕事をいただいたことがきっかけで、その取り組みに共感し、まちへの関わり方が主体的になりました。スキマcinemaもリノベーションまちづくりに後押ししてもらい、また、NUMAZU DESIGN CENTERというまちに開いたクリエイティブ拠点+シェアオフィスもつくりました。
リノベーションまちづくりって『欲しい暮らしは自分でつくる』という視点に重きを置いていました。
自分たちの暮らしのために自ら動くから楽しいんです。
多分外から見て、暮らしを楽しむ人の変化や面白さっていうのは、まだわかりづらい気がしています。これから少しずつ面として外に見せていければ。今はそんな段階なのかなって思っています。」
私の半径
「私は、暮らしの半径25メートルぐらいの中で「住むことと、仕事することと、遊ぶこと」を叶えたいと思っています。NUMAZU DESIGN CENTERをしながら、ここ(新仲見世商店街)は子供の通学路で家も近くて。商店街の人もみんな知っていますし。
自分の暮らしを楽しみながら、全部が繋がっている感覚はあります。その延長の映画祭みたいな、そんな日常を大切にしたいと思っています。
沼津にはシネコンがあるんですけど、ミニシアターがなくて。
東京から沼津に来た時に、海もあって、山もあって、富士山も見えて、すごくいいところだと思ったのですが、なぜかすごく息苦しい部分があって。
それがなんだろうと考えてみた時に、映画などカルチャーの選択肢がほとんどなかった。東京に住んでいて沼津に来たので、余計にそれを感じました。
選択肢が多いほど多様性があり、街は面白くなると思っています。
だから、その1つを自分でちょっとやってみる感覚なのかもしれません。
個性的なクラフトジンの工場ができたり、コーヒーショップや本屋がオープンしたり、クラフトビールも沼津でたくさん増えて、若い人たちが自分の街を楽しみたいと思って集まってきています。
私の半径にはどんどん楽しいことが始まっています。」
めぐる沼津映画祭の見どころは?
「映画祭はまちを巡る仕立てで、3ヶ所に設置した会場も面白くて、コンクリートむき出しのスケルトンのビルだったり、レトロな建物だったり、入ったら噴水のあるバーだったり。
沼津にはなかなか面白い建物が残っています。そういったところや周辺のお店を巡りながら、普段見れないような映画に歩きながら出会える。
いつもと違う視点でまちなかを歩ける一日にきっとなるだろうって。その面白さに気づいてくれる人が増えたらいいなと思っています。
上映作品の映画監督もお呼びしていて、クロージングセレモニーにはレッドカーペットを敷いて、監督の紹介などをするんですけど、昨年は遠くは京都からはじめて沼津に来てくれたりしました。そういう人に沼津って楽しいねって思ってもらえたら嬉しいです。」
大木さんにインタビューした後に沼津の商店街を歩くと、まるで静岡じゃないみたいな、そんな新鮮な視点が得られた気がしました。そしてそう感じた自分が少し嬉しかった。
沼津の街はもちろん、集められたショートフィルムも本当に魅力的。
ぜひ11月の沼津を楽しんでいただければ。