【インタビュー】静岡市立登呂博物館 渡邉さん・巻田さんに聞く
静岡市立登呂博物館はJR静岡駅から10分の場所にある、歴史体験施設。
全国でも稀有な、好立地・住宅地の中にあります。遺跡や出土品から推察する考古学・歴史学の観点から、さまざまな切り口で「登呂ムラ」の暮らしを味わうことができます。
地域の暮らしや、弥生時代そのものへの理解を深めることができる博物館です。ここでは、展示品を見て学ぶだけでなく当時の人々への理解を「体験」を通して色濃く感じることができます。
博物館のさまざまな企画をされている学芸員・渡邉智大さん、体験指導員・巻田直紀さんにお話を伺いました。
出土品から、当時の追体験をデザインする。
登呂遺跡では水田地域の暮らしにまつわるさまざまな道具が出土しています。鍬(くわ)や田下駄(たげた)などの農具から、台付甕(だいつきがめ)や杓子形木器(しゃくしがたもっき)などの調理に用いた器具。さらには腰掛けと呼ばれる木製の椅子も発見されています。
これらから当時の人々のさまざまな情報を推測することができてとても面白いんです。
みなさんにもこの魅力を味わっていただき「体験」をさらに深いものにするために、当博物館では暮らしの道具を「つくる」ことを企画しています。過去には「腰掛け」「木のさじ」「舟形木製品(ミニチュアの船)」などをつくるワークショップを行いました。つくりながら感じて学ぶことで自分と比べながら当時をイメージしてより解像度の高い理解をしてもらえたらと思っています。
体験することで、自分ごととして歴史を学べる。
登呂博物館は「参加体験ミュージアム」を掲げていまして、一般的な博物館のように見るだけでなく五感で弥生時代の人々の理解を深めてもらいたいと思い活動をしています。
屋外には約2000年前の住まいを再現した住居に入ることが出来たり、田園風景を再現した復元水田での田植えや稲刈りなど実際に同じ景色に入り体感することができます。
また、火おこし体験では、当時の人々と同じように火を起こすこともできます。学ぶだけでなく、実際に味わうことで自分ごととして歴史を感じていただきたいと思っています。
暮らしと密接な、祈りと道具。
弥生時代は明確な科学があったわけでなく病や不安に対して、心を安定させるために「祭り」や「祈り」があったと推測されています。祭殿やその道具から、少しづつその全容が明らかになってきています。
今の人々と同じように、当時の人々も悩みがあったのです。
実際にこの遺跡でも「箱作りの琴」という楽器のようなものが出土し、展示も行っています。この11月にはこの出土品を再現した「箱作りの琴」をつくるワークショップを開催します。出土した琴の素材は地域の杉材を使用し、木材を加工して組み上げる形状にしていました。信仰の道具として丁寧なものづくりがされていて木目も密な美しいものが使用されています。弦の素材は朽ちてしまいわからないのですが、そこもロマンがありますよね。ワークショップは当時と同じ杉を素材に、楽しんで、安全に歴史を学ぶ工作教室です。なるべく当時の道具や素材と同様のものを使い、短時間で体験ができるよう組み立てキットをご用意しています。
今後も色々なワークショップや体験を展開していきますのでぜひ私たちと一緒に、弥生の暮らしや考古学・歴史学を楽しんでいただけたらと思っています。